美しき日本の面影 その15
花の都1
杉田の梅園 絵葉書写真
「シッドモアは明治十年代の見分であるけれども、横浜近郊の杉田という梅の名所についてこう述べている。
「梅見の期間を除けば、杉田の存在はほとんど注目を引かない。……花が開くと杉田は休日の雰囲気をかもしだす。
茶店も開けば、立て場茶屋もさっと姿を現わし、赤もうせん敷きの縁台をたくさん小森じゅうに並べる。……浜辺に向けて小舟が数珠つなぎになってゆっくりと進入し、丘はと見れば、人力車の縦列が何組ともなく越えてゆく。
とぼとぼ歩いてやって来るのは巡礼さんだ。……この小さな村里を訪れる者が一日千人ということも珍しくない。……人込みなのに、万事が気品あり、落着きがあり、きちんとしている。
枝もたわわな花の下に腰を掛け、沈思、夢想にふける人。梅花に寄せて一句を物し、書き留めた紙片を枝に結びつける人。こうした日本的な耽美ほどあか抜けした悦楽はないのだ」。
渡辺京二 逝きし世の面影 第十一章 風景とコスモス より
左 歌川広重 東海道余興 杉田 梅盛 右 横浜名所 杉田の梅林 絵葉書写真
左 歌川広重 名所江戸百景より「蒲田の梅園」 右 蒲田の梅園 撮影データ不明 着色写真
左 歌川広重 江戸名所より「亀戸梅屋舗」 右
亀戸梅屋舗
左 向島の桜 右 飛鳥山の桜花
左 上野公園の桜 右 吉原 大門の内の桜 この時期だけ花を咲かせて、染井の職人が移植した。
左 横浜 野毛山の桜 着色写真 右 セオドア・ワース Sunshine and cherry blossoms, Nogeyama,Yokohama 油彩